(お父さん) 「鼓膜再生療法」を受けた

医療関連の話題をblogというかサイトに掲載すると、サイトの検索スコアが下がるのはわかってはいる。それは症状などのキーワード検索から民間療法や非科学商品などの販売サイトへ藁をもつかもうとする患者さんが誘引され、かえって治癒から遠ざかることがあるからだと承知している。とはいえ、サイトやページの検索順位が下がったとしても、同じ悩みを持つ人たちが前述のようなアカンサイトに引っかからないためにも、自分の体験を共有することは無意味ではないと信じて掲載しようと思った。
前置きが長くなった。
タイトルにあるように、「鼓膜再生療法」で鼓膜穿孔(鼓膜の穴が塞がらなくなる症状)の治療を受けた話だ。受けたばかりなので、症状が改善したかどうかは、後日追記予定だ。

今年の1月、数年ぶりに中耳炎を発症し、数週間近所のお母さん先生がやってる耳鼻科のお世話になっていた。中耳炎になると炎症のため中耳に膿がたまり、それを排出するために一時的に鼓膜に穴が開き、炎症がおさまり膿がでなくなったところで自然に穴が塞がるのが望ましい進行例。まあ、ならないのが一番望ましいんだけどね。だが、加齢によるものなのか、体質なのか、症状の程度や期間の問題でこの穴が自然に塞がらず開いたままになるのが「鼓膜穿孔」という症状だ。
春先になっても耳の違和感は改善しないし、なんだかいろんな音がゴワゴワした音質にしか聴こえない気がして気持ち悪かった。一番困ったのは、ネット会議の音声をノートPCの内蔵スピーカーで聴いていても会議の内容を聴き取れないようになったこと。それでヘッドセットを探していたのは一つ前のエントリーにある通り。
もともとは耳掃除の目的でこんな感じのカメラは持っていた。


炎症の具合を見てみようと思っていたのだが、PCの画面に写った映像を見て驚いた。
「ア、 ア、 ア ナ ア イ テ ル」
怖くなってとりあえず「鼓膜 穴 開いたまま」とかで検索すると、それが「鼓膜穿孔」という症状だと知った。そのまま放置すると、難聴状態になるともかいてあるし、水泳も耳栓しないとダメとかも書いてある。ううむ。
そして「鼓膜穿孔」で検索すると、これを日帰りの「鼓膜穿孔閉鎖術」という手術(わかりやすいのはこのページ)で治してくれる街のクリニック的な耳鼻科のページがたくさんヒットする。なるほど、この手術受ければ、日帰りでいけちゃうのかーと思って、検索して都内でいくつかの病院の手術について検討をしていた。費用については、3割負担で5万円から10万円と表記しているケースが多かった。「それくらいで難聴が回避できて、水泳もできるようになるなら払ってもいいか」とぼんやり考えていたが、妻に相談したところ、「まずはいつものお母さん先生に相談してみなさい」とのアドバイスを得た。
というわけで、徒歩3分のお母さん先生のところへ行って相談。
オレ:「先生、鼓膜の穴が開きっぱなしなんですよー」
先生:「まずは見てみましょう。・・・。はい、確かに開いてますね。これはもうこのままで閉じないやつね。でも状態はいいから、積極的治療をしないで、気をつけて生きていく、という手もあるわよ、もう若くないんだし」
オレ:(いやまだ、これからトライアスロンにチャレンジする可能性だってあるんだし(可能性しかない笑))
「先生、なんかネットで調べたら、日帰りでふさいでくれるクリニックいっぱいあるんですけど、そういうところ行っていいですか?」
先生:「ダメですっ!そういうところは、中耳の状態を確認もせずに蓋だけするから再発する可能性もあるのよ。お金はらっても再発したらパーですよ、パー」
オレ:「まじすか。じゃあ、やっぱしちゃんと診断してくれる大学病院とか行って観てもらった後なら手術していいですか?」
先生:「そうしたいなら、そっちの方が断然いいわよ、私が紹介状書いてあげるわね。すぐそこの慶應病院でいいかしら」
オレ:「はい、ではお願いします」
という感じでクリニックでの日帰り手術は秒で却下され、その場で慶應病院の診察予約まで完了した。

予約した日時に慶應病院へ行き診察を受ける。医療用の立派なカメラで耳の中を見てもらった。
ちなみに先生は若くてイケメンで、マスクしてて顔の全体像はわからないけど、涼しげな目元はNetflixでみた「ウ・ヨンウ」の主人公の上司役のチョン・ミョンソク(キャスト:カン・ギヨン)にそっくりだった(いらない情報)

先生:「あー、確かに穴開いてますねー、穴が小さいし状態もいいので『鼓膜再生療法』で治る確率が高いと思いますよ」
オレ:「あれ?先生、ちょっと前に見た時より、穴が小さくなってる気がします。もしかしたら、もうちょっと様子を見てたら自然に閉じませんかね?」
先生:「一般的は3ヶ月を超えたら閉じないと言われてますが、様子を見るのは止めません。1ヶ月ほど様子を見ましょうか。ただ、内耳の状態を見るため、CTだけ撮らせてください」
ということで初回はCTだけ撮って処置せずに終了。
1ヶ月後に見せに行った時にも穴は開いてて、CTの結果も良好で中耳には何も問題がないとのことだったので、再生療法をすることとなり、日帰り手術の予約を済ませた。その日は手術に向けた血液検査だけをした。
果たして手術当日。手術は診察室でそのまま実施。耳の中を局所麻酔をして鼓膜に傷をつけるところでズキンと痛みを感じたので、麻酔は結局3回やってもらったけど、その後は痛みもなく20分ほどで処置完了。うまくいったとのこと。3日完は禁酒禁走といわれたが、薬の処方はなし。最初の3日が大切とのことで、綿球をつめ、乾燥させずウエットな状態をキープするように注意された。
手術はこんな手順。

検索してた街のクリニックの「鼓膜穿孔閉鎖術」こんな手順なので、耳の後ろ切ったりしてちょっと面倒くさいのに対して「鼓膜再生療法」の方は耳の後ろ切らなくていいし、万が一、一度でで穴が閉じなくても4回まではできるらしいので成功率もさらにアップ。ただ、今回は1回で大丈夫でしょうとのお話。
このページ(慶應の先生のお話)では「鼓膜再生療法」2019年からできるようになったと書かれている。街のクリニックの手術は古い手法で実施されていることもあるようなので、大学病院を紹介してもらって最新の医療を受けた方が安心だし予後もいいようだ。

そして、気になるお会計だ。10万円を覚悟していたオレが自動支払機で見た金額は、
6,640円。
ををお。ありがてえ。というわけで今回のケースでの学びは
・ネット検索だけでの医療選択はリスクもあるし、安いわけではない。
・かかりつけ医から大学病院を紹介してもらうエスカレーションルートはちゃんと活用すべき。
当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、時間を惜しまず病院へ行けば、かえって時間短縮にもなるし、安全で最新な高度医療が受けられるということと痛感した次第。
ちなみにオレの鼓膜の穴の写真はこちら。グロいので、べつページにしてあるので、勇気のある方だけご覧くだされ。